Magic Halloween
……そんなの、いやだっ。
明日から、また元に戻るのに。
あたしが自分自身に魔法をかけるのは、今日しかないのに。
気合を入れて、深呼吸。
鉛みたいに重い足をあげて、高斗の元へ。
重いはずだったのに、いともたやすく吸い寄せられる。
ゆっくり歩んでいくと、近づいてくるあたしに気付いたのか、話していた高斗が最初にあたしの姿を捕らえた。
一分くらい、時が止まったみたいだった。
もちろんそんな止まってるわけもなく、ただ高斗が数秒だか十秒だかあたしを見つめてただけなのだけど。
……うわあああああああ!!
その瞳に映され続けることに耐えられなくなって、あたしはすごい勢いで急カーブした。
どくんっ
どくんっ
心臓が早鐘をうって、血液が逆流する、そんな感覚に侵されながら、さっきの光景が猛烈に網膜に焼きついている。
やばい。不意打ちだあんなの。
だって目なんてあったの久しぶりなんだもん!!
適当に徘徊して、壁にもたれかかると、少し落ち着いた。
落ち着くと同時に襲ったのは自己嫌悪。
もろに目があって逃げてしまった。
だめじゃん! このへたれめ!
あたし超感じ悪い!
絶対嫌な思いさせたよね。これじゃあ話すのなんて無理だあ。
……とりあえず一度、外に出よう。
出入りは自由なので、頭を冷やすために一度外にでることにした。
体育館の横にはベンチがいくつか置いてあって、そのうちのひとつに座る。
「はあ」
だいぶ肌寒くなってきてるので、外の風は少し寒かったけど、今の火照った顔を下げるのはちょうどいい気がした。
「あたしって、ほんとだめだなあ」
自分でも聞こえるか聞こえないかの声でいって、ひざを抱え込む。
どこまでもヘタレでイクジナシ。
自分をここまで追い詰めたのに、肝心なところでは逃げてしまうなんて追い詰めた意味が無い。
「あいつ、一人になんてなるのかなあ」
どうやったらバレないかに必死で、高斗とどうやって話すかをまったく考えていなかった。
スケジュールがまったくわからないから作戦をたてようもなかったんだけど。
無謀だったのかもしれない。
高斗は人気者だ。
いつだってだれかに囲まれて。いつだってだれかと一緒で。
一人の時に、話しかけるなんて。
まず、一人になんてなんないし。
気持ちばかりが先行して熱くなってたけど、よくよく冷静になるとなんてあたしって無計画なんだろ。
話したい。
ただ、それだけだったのになあ。