Magic Halloween
「トリック オア トリート?」
――――!?
耳を掠めたその声に、あたしの背中に熱が集まっていくような気がした。
こ、このこえは。
いやまさかそんな。さっきまであんなに囲まれてたのに。
うそだうそだ。
心は否定するくせに、やっぱり引き寄せられるように体は振り向く。
――なんで?
そこには予想通りで、予想外の人がいた。
「た、かと……」
「あ、俺のこと知っててくれてるんだ。光栄」
思わずぽつんとでた名前に反応して、体育館の光でわずかに見える高斗はにっこり笑っていた。
そして高斗は当たり前みたいに横に座った。
「なん、で」
「さっき目、あったのに思いっきり避けられちゃったからさー俺傷ついちゃった」
「あ、あれは違うの! 避けたとかじゃないの!」
しょぼんとする高斗に、手をふりながらあわてて言い訳する。
ただ恥ずかしかっただけで!
「……ぷっ。あはは」
あたふたするあたしに高斗は思いっきり笑った。
「え?」
「じょーだんだよ、じょーだん」
けらけら笑うのは、いつものお調子者の顔で。
「ほんとの理由は、すっごい仮装してる人がいるからさ、好奇心」
「……え?」
「一人だけ目立ってたよ」
「アウェイなことくらい、わかってるもん」
目を伏せて顔を背けてしまう。
化粧も髪型も、あたしだけが一人パーティー状態。
新調した服も、コスプレ屋の魔女っ子だし。
その行動が、ああゆう状況を生み出すことなんて充分予想できた。
それくらいしなきゃ、変われないと思ったからだ。
「でも」
逆接で切られた言葉が気になって、高斗に視線が戻ってしまう。
「超似合ってる」
そんなあたしに向けてくったくなく笑う彼に、胸がきゅっと鳴った。
「……あ、ありがと」
うわあ、どうしよう。
あっさりと話せた。ずっとずっと話せなかったのに。
4年ぶりくらいだ。
いつだって遠くから聞いてるだけだった声が、こんな簡単に。
しかもほめられた。
ああ、もういいことづくしだ。