Magic Halloween

――なんだこれなんだこれ。

「面と向かってそんなんいわれたん初めてだわ。ちょーてれる」
がしがし頭をかく高斗に、さらに縮こまる。
「でもよく知ってるね? 俺、そんな目立つ?」
「あ、あの、目立つっていうかよくそういう仕事してるし、高斗が来たらみんな吸い寄せられるから」
ぷっと小さく吹き出される。
「なにそれ。俺、蜜でももってるみたいだな」

蜜。

あ、そういう言葉が適切かもしれない。
あたしたちは蜜に吸い寄せられる、ちょうちょみたいな。

「でもあたし、うらやましい。いつも楽しそうだもん」
「ゆりかちゃんは、楽しくないの?」
「うーん。楽しい時は楽しいけどね」
苦く笑いながら、そういうことじゃないんだ。と心の中だけで付け足す。
「あたしあんまり友達も多くないし」

友達が少なくて、人見知りのあたしはいつだって高斗がうらやましかった。
社交的で男女問わず仲良しで。
その輪に入る勇気もあたしにはなくて、あたしをその輪にだれかが入れてくれることもない。
いつも、あたしは『みんな』の中には入れない。

「友達と仲良いでしょ?」
「うん、まあそうだけど」
「じゃあ、いいじゃん。俺、みんな友達だけどさ、特別仲が良いって子、あんまいないんだ」
「――え?」
「だれとでも遊ぶし、だれとでもしゃべる。それでも親友みたいな関係のやつ、いない」

たしかに、そうなのかもしれない。
高斗はだれか特定の人と仲いいわけじゃなくて、当たり障りなくって感じで、どこのグループにもいるけど、どこのグループにも所属してないような、そんな感じはする。

「だから友達少なくても、本音ぶつけあえるんならうらやましいよ、俺は」
寂しそうに笑う高斗に胸がきゅうっと締め付けられる。

そうだよね。高斗には高斗なりの悩みがあって。
隣の芝生が青く見えるように、ただいいところしかみえてないんだ、あたしは。

友達が少ないあたしと、友達が多い高斗。
言葉にしてみれば高斗のほうが充実してるようにみえるけれど、本当はどっちが幸せなのかな。

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