Magic Halloween
「なにいってんだろ。初対面なのにな。ごめん、忘れて」
ずくんっ
思いがけずいわれた“初対面”が胸をえぐった。
ああ、そっか。そうだった。
あたしだけが懐かしく感じてたけど、初対面なんだった。
「気にしないで。そういうのって第三者のほうが案外気楽にいえるもんでしょ?」
自分でもぎこちない笑顔なのがわかった。
“初対面”でいいって思ったのはあたしなのに。
でもやっぱりどこかで気付いてほしいんだ。
あたしはゆりかじゃないんだって。
小さい頃いつも遊んでいた幼なじみなんだって、気付いてほしいんだ。
矛盾、してるな。
「うん、ま、そうかも。ありがと」
「それに気付いてないだけでいるんじゃない? そういう友達」
「どうかな」
「絶対いるよ」
にこっと笑いかけると、高斗はきょとんと間抜けな顔をした。
えっ、その顔なに?
なんか変なことでも言った!?
「あの、さ」
「たかとーー!」
高斗がなにかいいかけたそのとき、中から高斗を呼ぶ声。
高斗は腕時計を確認して、あちゃー。もうそんな時間か。とぼそり。
あたしに向かって、申し訳なさそうに両手を合わせ、腰を浮かせた。
「ごめん。ちょっといってくる」
「あ、うん」
「話、聞いてくれてありがと。また、よかったら話そ」
満面の笑みで言われたその台詞は、心を大きくはずませた。
「うん。あたしでよかったら……!」
「じゃあまた」
ひらひら手をふって、高斗は中の方へ走っていった。
それを夢うつつのまま見つめる。
頬を両手で包む。ゆるゆると緩んでいくのがわかる。
“よかったら話そ”
まさか、こんなに夢みたいなことが起こるなんて。
まだ胸のときめき止まらないんだけど!
うれしい。
今日、来てよかった。仮装してよかった。
気付かれなかったのはやっぱり少しさみしいけど、もういいや。
初対面でもなんでも、高斗と話せた。
それだけが、涙がでそうなほどうれしい。
「……はあー」
さっきのため息とは全然違う。
安堵と幸せ。
――やっぱり、好きだ。