この結婚には愛しかない

「明日は特別な記念日になるね。最強の開運日を味方につけて夫婦になろう。楽しみだよ。莉央のご家族も、指輪も」

「私もです」

「ごめんね完璧な人間じゃなくて。仕事も何もかも、マルチに上手くこなせればいいんだけど」

「そんな、伊織さんは」

「一緒に暮らして幻滅されないか心配だよ。“小泉さん”の憧れの“神田さん”が俺の最強のライバルだからね」

「私の方こそ心配です。すっぴんが別人だと思われてないかなとか、せめて眉毛書こうかなとか。体力なさすぎだし、今だってお腹のお肉とか気になってちょっと力入れてます」

ははっと声を上げた伊織さんが、何もかもかわいいと言ってくれる。

伊織さんはかわいいの判定基準がゆるゆるだ。


「それに俺、小さい頃から甘えただしね」

「かわいいです。甘えられたらきゅんきゅんしちゃいます」

「あとね、俺すごくすけべだったみたい。ずっと性欲なかった反動かな。その服胸元空いてるでしょ?谷間が見えて、そこに手を突っ込みたいって思ってる」

「伊織さん!」

腰を支えてくれていた手が背中を上がってくる。キャミソールがめくれて、ヒヤリとエアコンの風を感じる。
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