この結婚には愛しかない
「こら、じたばたしない。嫌い?こんな俺」

「嫌いなわけないじゃないですか」


安心した。と微笑んで瞳を閉じた伊織さんは、本当に綺麗なお顔で、ずっとこのまま見ていられる。

悪戯な手も止まり、このまま眠ってしまうんじゃないかと思うほど、穏やかな笑みを浮かべている。


「伊織さん。神田家ではお祝いに欠かせないメニューってありますか?」

うっすら目を開けて、そうだなあと眉根を寄せる。

「手巻き寿司かな。俺たち兄弟がまだ小さいうちは誰かの誕生日は家族揃って必ず手巻き寿司だったな、懐かしい」

「手巻き寿司ステキですね。明日の晩ご飯手巻き寿司にしませんか?定番の具材とか、どんな具材が好きか教えてくださいね」

「いいの?でも明日はスケジュール詰め込んだから莉央も疲れるでしょ」

「伊織さんとの特別をたくさん作りたいんです」

「うんありがとう。俺もだよ」


目を開けた伊織さんが、私の左手に指を絡ませ、手の甲にキスをくれた。

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