この結婚には愛しかない

「莉央の家に来てからずっと気になってたんだけど、指輪なんでしてないの?」

「傷ついちゃうと思って」

「プラチナとダイヤだからそうそう傷つかないよ」

「そうなんですね。じゃあずっとつけてますね」

「24時間、365日外しちゃだめだよ」

「はい」

「明日買うマリッジリングもそう。俺も絶対外さないから」

「はい。ずっとつけていてください」

「うん」


莉央、と名前を呼んだ伊織さんは、目を閉じていて。

少しして、キスを待っていることに気づき戸惑っていると、再び「莉央」と催促され。

私から口づけた。ゆっくり重ねるだけでも未だに身体に力が入る。


「それだけ?」

「(そんな...)」

「ん?」

「してください。伊織さんにされたいです」

「ははっおねだりされると嬉しいね」


ぐるんと上下が逆転し、伊織さんと目線が交差する。

伊織さんの、熱を帯びた黒目がちな瞳いっぱいに、私がいて。


「まいったな。愛してるしか浮かばないよ」


少し困ったように微笑む伊織さんが近づいてきて、目を閉じて、大きな背中に腕を回した。

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