この結婚には愛しかない
全てがスムーズで伊織さんのプラン通りにことが運んだけれど、私のマンションに帰って来たのは、18時を回っていた。

伊織さんは明日からの出張準備もあるので、ご飯を食べたらホテルに戻ることになっている。


テーブルの上で、結婚指輪を取り出す伊織さんを見て、私の両親にしてくださった挨拶を思い出し、涙が込み上げてくる。


『ご存知の通り、親会社であるホールディングスが買収され、我が社は今、第2次創業期を迎えています。仕事では立場上大きな決断を迫られることが多く、ミスが許されず常に気を張っています。そんな私が唯一心を許し、素の自分でいられるのが莉央さんです。莉央さんの穏やかで優しい人柄にいつも救われています。未熟な私ですが、莉央さんと支え合って、2人で幸せな家庭を築いていきたいです。小泉家の大切なお嬢さんとの結婚をお許しください』


「莉央?どうしたの?」

「伊織さんが両親に挨拶してくださった言葉を思い出したら涙が出てきました」

「実家でも泣いてたのに?お義母さんと一緒に」

「すごく嬉しくてすごく感動しました。動画に残したかったです」

「ははっ、それは嫌だな」

莉央は涙も綺麗だね。と笑いながら涙を拭ってくれて、左手の薬指に指輪をはめてくれた。
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