この結婚には愛しかない
「旧体制の古き悪しき日本企業にうんざりなんだ。派閥争いの足の引っ張り合いばかりしてたら業績が悪化するに決まってる。他にも思うところはたくさんある」

「ホールディングスの業績回復が見込めないって噂も聞くけど、伊織から見てどう思う?」

「あー、...」

返事は濁したが、俺の表情から読んだと思う。何か考え込むジェイデンに「俺のプラン聞いてよ」とあえて明るく話しかけた。


「プラン1。彼女を迎えに行って、彼女の会社の経営に入る」

「なんだって?」

「彼女のいる子会社は半導体製造部門として設立されたんだけど、独自の事業がかなり調子よくて面白い会社なんだ。このままホールディングスにいるよりずっといい」

「プラン2は?」

「無職になって迎えに行くよ」


何言ってんだよ。と呆れた顔で首を振る。そんな男は振られるぞと、ごもっともだ。

「ずいぶん長い間恋人がいない寂しい男の趣味は株と投資だよ。あと筋トレを少し」

「わお!いくら儲けた?」

「出向中にはホールディングスの給与と出向先の給与が両方支払われるだろ?海外出張は破格の手当が出る。それを元にね。資産運用の才能があったみたいだ」


ジェイデンが瓶ビールを自分の顔の前で揺らす。その仕草に応え、俺も瓶ビールを手に持った。


「「Cheers!」」
< 127 / 348 >

この作品をシェア

pagetop