この結婚には愛しかない
「結婚式には呼んでくれよ。伊織のためなら日本に飛んでいくよ」
「ありがとう。じゃあジェイデンにスピーチ頼むよ」
「オッケー、俺はそこで、伊織は君を思ってシンガポールのバーで大泣きしたよって話せばいいな」
「その前にみんなが分かる日本語をしゃべれるように練習してよ」
「オオ!」とオーバーリアクションのジェイデンが、笑いながら俺の肩を叩き、がんばれよと励ましてくれた。
「彼女に会えたらまず1番に何をしたい?」
「ハグしたいな。彼女を抱きしめたい」
考えるよりも先に言葉が出ていた。
その半年後、仕事でニューヨークに行く機会があった。
一般的な女性の指輪のサイズを入念に下調べして、彼女のサイズを予想し、例の店に向かった。
店内に入ると、すぐブロンドの女性店員がやってきた。
あれこれ勧めてくれるのを参考にしながら、彼女を想い、彼女に似合いそうなもの、彼女の好きそうなリングを選んだ。
「刻印されますか?仕上がりは今なら2週間お待ちいただきます」
「ええお願いします。今日の日付けと...そうだな、Iori to Rioと入れてください」
いつか渡せる日が来るまで、俺が大切に持っておくよ。
【side伊織-完-】