この結婚には愛しかない

「8月の長期休暇後半に新居へ引越しするんだ」「じゃあ湊と手伝うよ」と社内で佐和と話していたところに長谷川くんが来て、俺も手伝いたいと申し出てくれたのだ。

その夜伊織さんに、現在の長谷川くんとの関係性について告白した。

伊織さんに、私にとって長谷川くんはどんな存在かを尋ねられ、同僚であり大切な友人だと答えた。

伊織さんは微笑んで、引越し手伝ってもらおうよと言ってくれた。


長谷川くんとは少し気まずいままだった。実際今日長谷川くんが来るまでどうなるかなと気がかりだったけど、要らぬ心配で良かった。


今日の午前中までに、少しづつ家具家電が配送され設置も終わっていたため、手伝いに来てもらうほどじゃなかったねと、少し前に伊織さんと話したばかりだ。


「次の宅飲みここ決定。俺あの高そうなデカいグレーのソファーに赤ワインこぼしそうだな。こぼしたら専務怒るかな」

広々としたリビングを見渡しながら、まだ止まらない長谷川くんがおかしくて、大声で笑っていると伊織さんが近づいてきて。


「楽しそうだね。妻とは節度をもって接してね」


やべえ目が笑ってなかった。と顔を引きつらせた長谷川くんが呟いた。
< 160 / 348 >

この作品をシェア

pagetop