この結婚には愛しかない
「莉央ー、専務が湊を誘惑するー」

ピカピカのキッチンでカナッペを作っていたら、ちょうどできあがったタイミングで酔っ払いがやってきた。


みんなのおかげで引越し作業は早々と目処がつき、宴会に移行して早2時間。

湊さんがこの辺りに詳しいそうで、湊さんの案内で男性陣が買い出しに行ってくれて、美味しいレストランのテイクアウトと、アルコールもたくさん買ってきてくれた。

今はもう飲みの時間に移行している。


「えーかわいい!美味しそう!さすが莉央」

「市販のクラッカーで簡単だよ。佐和も今度作ってみて」

「1個食ーべよ」

持っていくね。と口をモゴモゴさせながらリビングのローテーブルに運んでくれたので、私は新しい取り皿とアルコールを何種類か持って行った。

そのローテーブルを囲む、みんなが座ってもまだ余裕のある大きなL字のソファー。伊織さんとの初めての夜のあの部屋を思い出して、なんだかドキドキする。


「はいはい専務どけてください」

佐和が伊織さんと湊さんが話している間に割り込んで、「誘惑しないでください」と湊さんの腕にぎゅっとつかまる。

佐和かわいい。

佐和はよく、普段甘えられないから酔った時だけでも甘えたいと言っていたし、実際何度も湊さんに甘える佐和を見てきた。
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