この結婚には愛しかない
「また2人で楽しそうだね」

伊織さんがやってきて私の腰を抱いた。それを見た長谷川くんが笑う。


「結婚おめでとうって話してました」

長谷川くんに対して伊織さんが「そう?」と言う。絶対違うよねという顔で。


「専務が飲みながら仕事の話ばっかりするつまんねえ人間だったら少しは幻滅できたんですけど、全然そんなことなくて普通に話題豊富で面白いし」

と、長谷川くんがここで一呼吸置いた。


「小泉さんのことすげえ大事にしてるのもわかったし」

「そうだね。莉央は俺が誰よりも大事にするから安心して」

「安心してます。だから、結婚おめでとうってことですよ」

「ありがとう。これからも妻をよろしく。念を押すけど節度を持って」

「分かってますって」

それから長谷川くんが「神田さん」と私に呼びかける。そう呼ばれたのはもちろん初めてで。


「神田さん結婚おめでとう」

さあ宮内さん湊さん。カラオケ行きましょ!と長谷川くんが2人の間に入っていった。


「湊さんと2人だったら、今からクラブ行ってナンパしまくるのに。絶対俺らイけるでしょ」

「長谷川!」

「宮内さんキレんなって。冗談っすよ」


そんな賑やかな声が、夜に消えていった。


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