この結婚には愛しかない
洗い物がちょうど終わった頃に、テーブルを拭いてくれていた伊織さんがキッチンに来て、一緒に手を洗って、一緒に手を拭いた。


「おまたせ」

「(なんだろう?)」

「2人きりだよ?キスしたかったんでしょ?」

「あっ!」

「ああごめんね。キスだけじゃいやなんだったね」


ひょいと脚を開いてキッチンに座らされ、両脚の間に伊織さんが身体を入れる。

腰をがっちり両手で抱かれ、私もおずおずと伊織さんの身体に腕を回した。

目線の高さが同じ。その距離10センチ。


「どうぞ」と目を閉じて待ってくれている伊織さんに口付けると、それはすぐに深くなり、必死で伊織さんに応えながら、息もできないほどの激しさにくらくら目眩がしそう。


「莉央」

2人だけのときに見せる、伊織さんの熱。2人だけのときの、艶めかしい声。

着ていたノースリーブのカットソーを頭から躊躇なく引っこ抜かれ、パチンと背中のホックを外さた。

その性急さから伊織さんの気持ちの昂りを推し量る。いつになく荒っぽいキスや息づかいからも。


すごく、欲しがってくれている。
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