この結婚には愛しかない
「すごく色っぽい顔になってる。まだキスしかしてないよ?」

「伊織さん...」

「ねえ、莉央は誰のもの?誰が莉央を大事にするの?できるの?」

「っん、伊織さん...」

「そうだよね。この甘い唇もその蕩けて潤んだ瞳も、すぐ赤く色づくこの真っ白な肌も」

口にした箇所を舌が這い、指で撫でる。

「この細い腰と脚も、柔らかでメリハリのある素直な身体も、サラリと指からこぼれる綺麗な髪の毛も、このかわいい爪さえも、何もかもが俺だけのものだよね」

雑に脱がされた着衣の中を彷徨う伊織さんに身を委ね、口から快感を声にして逃がす。


「伊織さん、です。私の全て...」

「そうだね。その普段からは想像できないほどの艶やかな表情も嬌声も、俺だけのものだよ。このいやらしい水音もね。もうここに入りたい」


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────…


「ごめんねキッチンで最後まで。身体痛くない?力が入らないだけ?」

「痛くないけど力が...」

身体に力が入らない私を抱いて、伊織さんがしっかりとした足取りでバスルームに連れていってくれる。


「莉央の中に出さなかった自分を褒めたいよ。よく我慢できた」

「伊織さん...えっちすぎます」

「これからキッチンに立つたび思い出すね。でもきっと、すぐ家中がそうなるね」


それだけで、身体がきゅっとなった。
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