この結婚には愛しかない
「そうしてください。伊織さんが喜びます」

「ははっ紛らわしいね」

「伊織さん、実はもうひとつ欲しくて...この子なんですけど」


背丈20センチほどの小さなガジュマル。

ガジュマルはそもそもぷっくりした根っこが特徴なんだけど、この子は根っこがハグしてるように見える。

店内で一目見て、家に連れて帰りたくなった子だ。


「なんかかわいいね。ハグしてるみたいだ」

「ですよね?私もそう見えてかわいくて。キッチンにちょこんとこの子がいたらかわいくないですか?」

「そうだね。でもこの子には昨夜のあの光景は見せられないな」

「伊織さん!」

瞬間的に顔が熱を持つ。それを見た伊織さんが意地悪に口角を上げる。


「どうした?思い出した?いい夜だったね」

「意地悪です!」

「ははっ、この子連れて帰ろう。この子は莉央って呼べばいい?」

「えー、かわいいけど...なんか嬉しくないです」

「そう?かわいいしかないけど」


鉢も2人で選んで、パキラとガジュマルを植え替えしてもらって、伊織さんの納車までの間の代車(と言えないほどの高級車)のトランクに慎重に乗せた。


これからどこかでランチをして、湊さんのお店で伊織さんのスーツを作ってもらうことになっている。
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