この結婚には愛しかない
部屋の鍵を閉めてすぐ。

パキラの“伊織さん”にただいまを言うのも忘れスマホの画面を見ると、伊織さんからメッセージが来ていた。


【お疲れ様。
明日は始発で帰るから昼過ぎには着くよ。
近場で申し訳ないけど明日はここに泊まろう。
ドライブと温泉の第2案だよ】

「(温泉?)」

送られていたURLをタップしたら、そこは車で1時間ほどの場所にある県内の温泉で。

花束もカバンも持ったまま、伊織さんに電話をかけた。


『お疲れ様』

6コール程で大好きな声が聞こえた。周りに人の声がして、そこで初めて気がついた。

時刻は19時。しまった!伊織さんは会食中だ。


「お疲れ様です。すみません会食中ですよね?かけ直します」

『問題ないよ。電話だって席外したから』

「すみません手短にお礼だけ。今花束を受け取りました。ありがとうございます、すごく嬉しいです。それと明日の温泉...何もかもびっくりで、嬉しすぎて、伊織さんの都合も考えずに電話しちゃいました。本当にありがとうございます」

『莉央からのありがとうが、俺にとってのプレゼントだよ』

「そんな...昨夜すでにプレゼントいただいてるのに」
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