この結婚には愛しかない
ベッドの上でずっと腕まくらをして抱きしめてくれて、必死で涙を堪える。

顔を上げたらバレてしまうので、その腕に甘え身体預ける。

伊織さんは本当に私にとって最高の万能薬で、夕方の辛さに対しての涙じゃなくて、伊織さんの優しさや温かさ、愛情に対しての涙だ。


「ミシェルさんなかなか強烈な方でした。でも憎めない方ですね」

「意地悪言ってごめんって言ってたよ」

「実はちょっと怖かったです」

「ははっだろうね。彼女はパワフルだからね」

他愛のない話をしていると気が紛れる。


伊織さんはお忙しいから、私のことで手を煩わせたくない。迷惑をかけたくない。

伊織さんは立場のある人。

それに厳しい人だから、支店長に社会的制裁を与えるかもしれない。

でも私はそんなことは望んでなくて。もうとにかく関わりたくない。そっとしておいて欲しい。私が我慢すればいい。


支店長ともう二度と会わなければ、こんなことにはならないから。


いつの間にか眠ってしまい、朝目が覚めたら気分がスッキリしていた。

朝のルーティンをこなし、目を覚ました伊織さんに、元気におはようが言えた。


「昨日はありがとうございました。お薬が効いたみたいです。お腹もすきました」

「顔色が良くなったね。でも今日は念の為仕事休む?」

「いえ大丈夫です。なんかいつも以上にやる気がみなぎってます」

「無理しないでね」とハグしてくれた伊織さんに、心の底から感謝した。
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