この結婚には愛しかない
「伊織さんは私のヒーローです」

「頼りないヒーローでごめん。でもどんな俺でも愛して欲しい」

「伊織さんの全てを愛してます。それに誰よりも頼もしいです」


ふ、と目を細めた伊織さんが、ありがとうと微笑んだ。

「伊織さんのことが狂おしいほど好きです。愛おしくて愛おしくて、上手く言葉に言い表せられません」

「ああ、俺もだよ。この気持ちに愛してる以上の名前をつけたいよ」


伊織さんには笑顔が似合う。笑顔の伊織さんを見るだけで私も笑顔になれるし、嬉しくなる。

全力でその笑顔を守りたいって思う。守られてばかりで、全然説得力ないかもしれないけど。


「大プロジェクトって仰ってましたけど、第2のホールディングス関係ですか?」

「それとは別件だよ。先日協議が始まったばかりだから詳細はこれからかな。まだまだどうなるかわからないしね」

「でも伊織さん100億って...」

「ああ、それはったり」

「はったり?」

「あの支店長が立ち直れない規模の額だと、そのくらいが妥当かなと」

ははっと笑いながら、もっと言ってやりたかったけどよく我慢できたって。


伊織さん...怖い人...

経営者って、このくらい度胸が座ってなきゃいけないのかもしれない。


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