この結婚には愛しかない
店の前で2人と別れ、湊と2人でコインパーキングへ向かう。

途中、アーケードの一角にできていた大行列の横を通り過ぎた。


「あそこの占い当たるらしいよ」

「そうなんだ。占ってもらいたい」

「何を?」

「健康」

「健康?若いのに、他にあるだろ」

あははと声を上げて笑う湊。だって恋愛って言って微妙な空気になったら気まずいでしょ!

すっごい緊張してるのに、いつも通りに普通に話せるから謎だ。


「お願いします」

湊の車に乗りこみシートベルトを締める。大きくてかっこいい車。いい匂いするし、車内はものがなくて綺麗だ。


家まで約15分。ふいに訪れた2人きりの時間は、あっという間に終わってしまった。このままドライブに連れて行ってくれないかなって期待したのに。


「ちょっと話そう」

アパート近くのコインパーキングに車を止め、シートベルトを外した。

ハンドルの上側に片手を乗せて、運転席から笑いかけてくる。


「なんか表情硬いな。緊張してる?」

「そりゃするよ」

「かわいい」

「全然可愛くない。素直じゃないし、」

「そうかな。可愛いでしかないけど」


直視できずに顔を逸らすと、左手が追ってくる。

「こっち見てよ」と顎に触れた指に連れ戻され、その眼差しに戸惑う。


その瞳は、私を好きって言ってるみたい。
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