この結婚には愛しかない
“付き添い”“友だち”から抜け出したいと思ってた。

湊から2人になりたいと誘ってもらえて、この狭い空間、このシチュエーション。気持ちを伝えるチャンスなのに、言葉が出ない。

なんて言おう、どうしよう。そんなことばかり考えていると、湊の薄くて形のいい唇から、ふ、と笑い声が零れた。


「俺は佐和のこと好きだけど、佐和は俺のこと嫌い?」

「そんな、嫌いなわけない」

「とにかく一緒にいて楽しい。可愛い。友達思いなところも凄くいいなって思ってる。佐和は?こんなおじさんはいや?」

「湊は全然おじさんじゃないし。私...湊に一目惚れして、実はあの日、莉央が中村くんに誘われた形になったけど、本当は私が湊を誘うつもりでわざとあの時間に...」

「佐和」


湊は微笑んでいて。


「俺たち付き合わない?」

「私でいいの?」

「佐和がいい」

「どうしよう、嬉しい」


助手席に身を乗り出して抱きしめてくれる。

嬉しくて嬉しくて。変わらず心臓バクバクで。私も抱き締め返して、幸せを実感する。


「うち...上がっていく?」

「上がったら帰らないよ?」

「...うん」

みんなといる時とは全然違う、色気を含んだ湊の眼差しに、体がきゅんとなる。
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