この結婚には愛しかない
【番外編③】
1.彼女を愛してるんだ



(じん)さん!お帰りなさい!」


昼過ぎに帰京したばかりの俺を居酒屋に呼び出した細谷唯斗(ほそや ゆいと)が、俺の姿を見つけて笑顔で立ち上がった。

大学の後輩で既婚者子持ち。今の所属は確か法人営業部のはずだ。

席まで案内してくれた店員に礼を述べ、細谷の向かいに座った。


「ただいま」

「元気でした?疲れてます?」

「気遣う言葉を掛けてくれるなら、今日はやめて欲しかった」

「だって神さん、すぐ忙しくなって捕まらなくなるでしょ?あ、帰任休暇いつまでですか?」

「1週間あるけど、明日会社に顔出せって言われてる」

「やっぱり。今日無理やり誘ってよかった。生2つと、あと食べ物適当に頼みますね」

備え付けのタブレットを操作しながら、口が止まらない細谷。

懐かしい、帰ってきた。と少しずつ実感が湧いてくる。


「辞令見ましたよ。執行役員、海外戦略事業部の部長って、さすが神さん勝ちですね。まあ神さんは生まれながらにして勝ち決定か」

「そんなわけないから」
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