この結婚には愛しかない
子どものように泣きじゃくる彼女を、俺はどうすることもできなかった。

連れ去りたい本心とは裏腹に、仕事がんばれと突き放した。

今までの人生において、1番厳しく辛い選択で、この選択が正しかったのかどうか、1日経っても答えは出ていない。


昨日、部屋のみんなからの花束と記念品とは別に、彼女から手紙をもらった。

ただただ、俺への感謝と、体を気遣う言葉。仕事をがんばるという決意表明が、便箋2枚に丁寧な字でびっしりと綴られていた。

読み終わり、シャワーを頭から浴びながら、全身を濡らす湯温よりも熱い何かが、目からとめどなく流れた。


このまま離れて関わりを断てば、時が忘れさせてくれる。

その願いは、たった今受信した彼女からのメッセージに阻まれた。


【お疲れ様です。
お言葉に甘えて、早速送らせていただきました。
今日は移動でお疲れですよね?
帰任休暇中はお仕事をせず、ゆっくり休んでくださいね。
またメッセージ送らせてください。
返信は結構です。】


ははっ、まいったな。

「神さん何笑ってるんですか?」

「ん?笑ってる?」

「なんだろう。穏やかで...好きが溢れでてる顔」

「(ウソだろ...)」

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