この結婚には愛しかない
寂しいとも逢いたいとも書かれていない文章に、彼女の人柄が反映されている。

もっと気持ちを出せばいいのに。

わがままを言って、俺を困らせてくれたら良かったのに。


あの部署には、今日若い男性が中途入社したはずだ。

採用に関わっていないからどんな人物か分からないけれど、どうか彼女と協力しあって、お互いを高め合っていける人であってほしい。

あわよくば、近くで彼女を守って欲しい。俺の代わりに。


と、まいったな。今度は大森新室長からのメッセージだ。


『お疲れ様です。昨夜の集合写真です』と添えられた1枚の画像。

俺の隣には、大泣き前の笑顔の彼女がいた。

約30人が集まる最前列中央。遠慮して端にいた彼女を俺が呼び、宮内さんに引っ張られてやってきたのだった。


「この3人。さっきのメンバー」

細谷に画面を見せ指さした。遠慮のない細谷は画面を拡大する。

「うわ、2人とも可愛いですね。綺麗系とカワイイ系。神さんこの子でしょ。神さんと雰囲気似てるもん。ごめん、さっきメッセージちょっと見えた。告白されたけど断ったとか?」


細谷が指さしたのは彼女で。

「されてないよ」

彼女の顔を見るとダメだ。一瞬で意識が出向中に引き戻される。

夏ごろだった。彼女から向けられる好意に気づき、喜びが込み上げたのは。
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