この結婚には愛しかない



朝目が覚めても夢の世界が続いていた。


でも俺の腕の中の莉央はかなりリアルで。

確かな温もりがあって、規則正しい寝息も微かに聞こえる。

「(おかしいな。こんな鮮明な夢。それにいつも決まってここで目が覚めるのに...)」

「う...ん」

寝返りをうった莉央がこっちを向いた。左手が俺の裸の胸に重なり、その薬指にきらりと輝くのは、昨夜俺が贈ったリングだった。


ああ、これは夢じゃない。

夢のような幸せな現実だ。


まどろみの中、昨夜の記憶が鮮明に蘇ってくる。


「この結婚に愛はある?」

俺の問いかけに「この結婚には愛しかない」と答えてくれた。

ベタなプロポーズだったのに、世界一幸せだと喜んでくれた。


莉央と初めての夜。

初めてのキス。キスだけで理性が飛んだ。


身体を緊張でガチガチにして恥じらう莉央の、俺のために着飾ってくれたワンピースを脱がす手が、早く早くと急いた。

あのワンピースはすごく可愛くて似合ってたけどダメだよね。

胸元や肩、腕が透けていて、普段からは想像もできないほどの色香を纏う莉央を、俺以外の男に本気で見せたくないよね。
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