この結婚には愛しかない
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「親会社の買収をニュースで知るって普通なんですかね。さすがにホールディングスの社員は事前に知らされてたんすかね」
コメント数えぐいっすよ。とハイボール片手にスマホの経済記事を流し読みする、後輩の長谷川爽太26歳。
不安げというより不満げだ。
キレイな顔立ちの彼に人懐っこい笑顔を向けられ恋に落ちた女性社員は数知れず。でも彼は見た目とは裏腹に、物怖じせずに自分の意見を発信できる度胸がある。
「でもほんと笑えん。これからうちの会社もどうなるんだろう」
同期の宮内佐和が、真っ赤な顔でそう呟いた。お酒に強くない佐和は、酔っ払って目が虚ろだ。今はこんなだけど、佐和はとても美人だ。
ホールディングスが買収されたその日の夜、いつもの3人で佐和のアパートで宅飲みをしていた。
私たちはいつも宅飲みで、いつの間にか決まった順番で3人の家をローテーションしている。
宅飲みは確かにリラックスできるメリットもあるけれど、私たちが宅飲みをするのには理由がある。