この結婚には愛しかない
「俺専務呼ぼうかって聞いたら、呼ばないでって言われたからすぐ報告せずすみませんでした。あの人、専務が忙しいの知ってるからですかね...」

「すみません今日はもう退社します。大森室長、申しわけないですが今日この後社内の打ち合わせ3件、代理で出席してもらえませんか?」

「承知しました」

「よろしくお願いします。長谷川くん」

「はい」

「ありがとう。君がいてくれて良かった」


2人を追い出すように、カバンとスーツの上着を持って部屋を出た。自然と足早になる。


莉央ごめん。すぐ帰るから待ってて。

無事家に帰れた?過呼吸になってない?

ごめん。


本当にごめん。



「クソッ」

役員用の駐車場で車に乗り込み、膝の上で拳を握る。ハンドルを叩きつけそうになり、ぐっと堪える。

全て俺の落ち度だ。自分が許せない。


怒りで震える手で、経理部長にメールを送った。CCに大森室長と長谷川くんを入れて。

都銀の支店長に至急会いたいので、最短でアポを取って欲しいと。
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