この結婚には愛しかない
「ははっまいったな。まだ愛が溢れ出して止まらないよ」

莉央のハンカチで目を押さえる俺に。


「伊織さんそれ涙です」

もらい泣きした莉央がつっこむ。


「そっか、これ涙に見えるか、愛なんだけどな」

「伊織さん大変、私も愛が、」

笑いながらそう言うから、ハンカチで拭いてあげた。


「私はもう大丈夫だと思ってたんです。昨日支店長に会うまでは。何年も経ったし、もう会うこともないと思ってましたし。でも結局、逃げただけだったから、根本的な解決はしてなくて。それを伊織さんが終わらせてくれました。助けてくださってありがとうございます」

「そう言ってもらえて安心したよ」

涙ながらに言葉を紡ぐ莉央は凛としていて。この2日間の俺の葛藤や後悔、苛立ちや自責を全て消し去ってくれる。


「あの...ミシェルさんにはああ言ったんですけど、その...して欲しいこととか、ミシェルさんのようにセクシーな格好しろとか、なんでも仰ってください。もっと愛してもらえるようにがんばりたいです」

「莉央が俺の隣で息してるだけで愛しくてたまらないから。ミシェルにも言ったけど、恥じらう莉央がどろっどろに溶けて訳わかんなくなってる姿ほど興奮するものはないから安心して」

「伊織さんだって、いつも優しいのにそういう時だけ意地悪ですごくえっちで...」

「でも悦んでるよね?身体の反応で分かるよ、莉央いつもギュって、」

「伊織さん!」


涙の浮かぶ瞳が、上目で俺を睨みつける。

可愛いでしかないから。
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