この結婚には愛しかない
今回の細谷との1泊の関東出張で、想定より数ヶ月前倒しで、第2のホールディングスの2社目と正式な契約を結ぶことが出来た。

来月からすぐ量産開始で売上も上がる。ただ、まだ2社合わせてもホールディングスの落ち込み分にも届かないし、来年度には受注がゼロになると、最悪を想定して動くよう、会社全体に指示を出している。

国内トップ3を誇っていた基幹事業の売上が。だ。


3社目として契約に向け進めている海外企業が、日本企業とは勝手が違い要求も煩雑なので、こっちは想定以上のリソースがかかっている。でもそれもやっと、最終段階まで来ることができた。

これが契約できれば、ホールディングス買収前の売上を僅かに上回ることができる。

あとはこのまま、もう1社、もう1社と守りを固め続け、具体的になってきた攻めを確実にモノにするだけだ。


莉央を迎えに。会社を救いに来て1年3ヶ月。

まだ口にできないし、気を緩められないけれど、この調子でいけば、想定よりも早く危機を脱することができそうだ。


「あ、そうだ。嫁に土産頼まれてるんだった。神さんも奥さんに買わなくていいの?」

「土産はいいけど花を買って帰りたいから、後で注文しておこうかな」

「今日奥さんの誕生日か何かですか?」

「ん?なんの日でもないけど、莉央が花が好きだから」

「なんでもない日に花あげるんですか?」

「何かがないとあげちゃいけないの?それに妻の喜ぶ顔が俺へのご褒美だよ」
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