この結婚には愛しかない
「変な気分ですね。ついこの前までこの駅に帰ってきてたのに、今はここから帰るんですもんね。地方出身の俺でもそうなんだから、神さんは特にそうなんじゃないですか?」

歩みを止めず、そうだなと考える。


「あんまりその感覚はないかな。どうした?東京に戻りたくなった?」

「そういう訳じゃないんですけどね。まあそのうち慣れるでしょ。でも俺本当に転職したこと後悔してないです」

「まだうちに来て3ヶ月でしょ」

「こうして神さんとまた働けて、神田専務と出張行けて楽しいですもん」

「そう。家族は生活に慣れた?5月だったよね、みんなが越してきたの」

「そうですね。嫁は機嫌いいですよ。外で子どもを遊ばせる場所も多いし、過ごしやすい街だって。あ、そう言えばこの前たまたま奥さんと社内で会ったんですけど、細谷さんお疲れ様です。今日はもうお帰りですか?って、でっかい目をきゅるんとさせて、あの笑顔たまらんですよね。まじ可愛かった」

「莉央が可愛いのは事実だけど、本当の可愛さは俺しか知らないし、俺だけが知ってればいいから」

「うわー、嫁愛半端ない独占欲つよつよ神さんもたまらんですね」

ここの弁当美味しいからここにしよう。と細谷に声をかけ店舗に入った。莉央の笑顔を思い浮かべながら。


今月は莉央の誕生日と結婚記念日がある。

またあのホテルのスイートで祝いたいから、サプライズで計画を練っている。


早く家に帰って莉央をハグしたい。
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