この結婚には愛しかない
その週末、小雨がぱらつく中、2人で病院に行った。

モニターに映し出された莉央の体内。ひとつの部屋の中から2つの心拍が聞こえた時は、本当に驚いた。


診察を終え、駐車場に止めた車の中で改めて白黒のエコー写真を見ながら、手を取り合って喜んだ。予定日は来年の3月だそうだ。

「体調大丈夫?」

「はい。普段と変わりないです」

「ちょっとだけドライブしない?近くをふらっと。行きたい場所があるんだ」

「行きたいです!」

「喉渇かない?どこかで飲み物買おっか」


走り出した車の中、莉央はエコー写真をじっと見つめている。

声をかけるのは止め、しばらく無言で車を走らせた。

無言だからといって思考が停止しているわけではなく、莉央のこと、子どものことに考えを巡らせていた。


「あそこでドライブスルーしよっか。カフェインレスのドリンクあるよね」

「オレンジジュースが飲みたいです」

「うん」


コーヒーショップのドライブスルーでアイスコーヒーとオレンジジュースを買って出た時、莉央が「あっ、ここ...」と呟いた。

「さっきのお店、私が伊織さんにダメダメなプロポーズした日の帰り、土砂降りの中湊さんの車で佐和と長谷川くんと来たお店です」

「そうなの?今日はあの日からちょうど1年だよ」
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