この結婚には愛しかない
「ねえ、さっきのエコー写真見せて?」

「はい」

ショルダーバッグから取り出したモノクロ写真を一緒に見て、先日芽生えたばかりの父親としての自覚が高まる。


「ここに赤ちゃんが2人もいるんですよ。お腹も大きくなってないし、つわりもないけど、心臓の音がしっかり聞こえましたね」

「そうだね。莉央と俺が愛し合って命を授かって...神秘的だね」

莉央が下腹部に手を当て、その上に自分の手を重ねた。


「伊織さん私...一度に2人も子供が...嬉しいけど、少し不安です」

正直な気持ちを打ち明けてくれた莉央に、「そうだね」と素直な気持ちを伝える。

多胎は通常よりリスクが高いと、さっき先生から説明を受けたことも影響している。


「でもすごく楽しみです。パパも一緒に十月十日(トツキトオカ)を楽しみましょうね」

瞳をうるませながらの笑顔は、綺麗で強い。

いつも以上の優しい笑みに母性が溢れていて、愛おしさが増す。


「伊織さんは男の子と女の子どっちがいいですか?」

「うーん、無事産まれてくれたらどっちでも。でも莉央に似たら可愛いだろうね」

「え、嫌です。男の子でも女の子でも絶対伊織さん似がいい。どうしよう私、想像したら幸せすぎて...」

涙ぐむ莉央の肩を抱き寄せ、瞼に口づける。
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