この結婚には愛しかない



真っ白なタキシードに身を包み、花嫁の準備ができるのを控え室で待っている間、子どもができてから今日までのことを思い出していた。


初めて病院を受診した翌日からつわりが始まった。

大好きな花の香りでさえNGになってしまいショックを受ける莉央。でも香水をつけていない俺の匂いは落ち着くからずっと嗅いでいたいと言われ笑った。

変われるものなら変わってあげたいと発言した俺に、「ダメですよ。つわりはママだけの特権ですからパパはガマンしてください」と、青白い顔で笑ってみせた。


誕生日と結婚記念日のサプライズは中止した。

当日はレモンを搾った炭酸水で乾杯しただけになったけど、それだけで幸せだった。来年は、今年の分まで祝おう。


程なくして少量の出血があって、簡単な家事のみOKの自宅安静を言い渡された時も、「安静にすることでこの子たちを守れるんだから、全然辛くないです」と笑える莉央は、母になってますます強くなった。

でも、時々すごく甘えたで、俺が寝る時くっついてきて離れないのが可愛くて可愛くて可愛くて...

とにかく愛しくて、莉央への愛は増す一方だ。


莉央の体調優先で式の準備がやっとだった。前撮りができなかったから、子どもが産まれたら4人で後撮りをする。


安静も解除され、つわりも治まった今日は10月の吉日。

莉央への永遠の愛を神に誓う挙式。

その後、お世話になった家族や友人たちに感謝の気持ちを伝えるための披露宴だ。
< 341 / 348 >

この作品をシェア

pagetop