この結婚には愛しかない
式に招待してから、宮内さんと長谷川くん、細谷の3人がどうしても余興をしたいとしつこくて、嫌な予感がして断っていたのに、それを知らない莉央が喜んでOKしてしまって。

俺と莉央の出会いから結婚、現在までを、15分間のコメディに仕立てで演じてくれた。


俺役を細谷(会えない3年間の東京での過ごし方をやたら聞いてきたと思った。でも莉央への愛の表現が全然足りてない。あんなもんじゃないから)

莉央役を長谷川くん(へえ、あんなに人前で堂々とできるようになったんだ。もっと仕事に活かしてもらおうか。莉央のドレス姿にうっとり見惚れてたしね)

語りを宮内さん(ジェイデンのために通訳付。優秀だな彼女。いつも莉央を支えてくれてありがとう)

大森室長は本人役の友情出演(主役級の働き。これからも俺を助けてください)


会場中が爆笑し、ラストでは感動の涙を誘うなかなかの仕上がりだった。


「ねえ莉央?俺“ははっ”と“まいったな”って言う?」

「はい。口癖ですよね」

「そうか...」

「長谷川くんの女装可愛い」

「は?俺以外の男に何言ってるの?」

「伊織さんの女装は美しいだろうなあ」

「そうじゃなくて。...まあいっか」


イエローのカラードレスにお色直しをした莉央と再入場し、終盤では、参列してくれたゲストへ。離れて暮らす両親への感謝を伝えることができた。

莉央が両親への手紙を読んでいる時、泣かずに莉央に寄り添えた。

会社の人間もいるからね。仕事関係者の前では涙は見せられない。


こうして、一時は延期も検討した結婚式を、無事終えることができた。
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