この結婚には愛しかない



莉央から妊娠を告げられてから今日まで、ずっと心待ちにしていた瞬間がついに訪れた。


産声を聞き、差し出された我が子を腕に抱いた、この特別な瞬間のこの気持ちは、本当に言葉では言い表せられない。

喜び。感謝。今まで以上に大きな責任を負うことに対しての覚悟。奮い立つような感動。

あふれる涙が止まらない。

どんなに知識を蓄えても、抜かりなく準備をしてきたつもりでも、まさかここまでとは。想像を遥かに超えていた。


出産を終えた莉央が、もう1人の息子を愛おしそうに抱いている。

つかの間の、家族4人だけの時間だ。


「かわいい、やっと会えましたね」

「莉央ありがとう。がんばったね」

「伊織さんがずっと支えてくれたから、私もこの子たちもがんばれました。小さいですね。こんな小さな身体でがんばって産まれてきてくれたんですね」

「うん。可愛くてたまらないね」

「ふふっ伊織さん号泣」

「うんごめん、今日もカッコ悪くて。莉央も無事で、子どもたちも無事産まれてくれてホッとして。本当にありがとう」

「伊織さんまた間違えてますよ。カッコ悪かったことなんて1度もないです。伊織さんは今日も世界一素敵です」

莉央は笑いながら涙を流し、指で小さな頭や頬を撫でる。

その仕草にも胸を打たれる。


「伊織さん愛してます。こんなに幸せにしてくださって、本当にありがとうございます」

「まだまだ幸せにし足りないよ。5年後、10年後、何十年後も今以上に幸せにするから、ずっと俺の隣で笑ってて」

「よろしくお願いします。私は大好きな伊織さんをずっと守ります」


出会った頃、傷付き表情をなくしていたキミからは想像もできない笑顔と、自信に満ちた力強い言葉。


俺は生涯、キミと子どもたちのヒーローであり続けるよ。
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