この結婚には愛しかない


長谷川くんと駅で別れ、電車の中で佐和にすぐメッセージを送った。

神田さんに会えたこの喜びを、誰よりも佐和に聞いて欲しかった。


何往復かのメッセージのやり取りじゃ、想いを伝えるには不十分で。

電車を降りたタイミングで電話に切り替えた。でもそれすら埒が明かないと、佐和が私のマンションに駆けつけてくれた。仕事終わりに彼氏とご飯を食べていたのに。

彼氏に事情を説明して、翌日の出勤の準備と1泊分の荷物を取りに家に戻り、彼氏がわざわざうちまで車で送ってくれたのだ。

佐和が一目惚れしたことをきっかけに交際が始まった彼氏は、佐和の行動に笑って振り回されてあげていて、とっても優しい。もうすぐ交際1年を迎える。


「それ好きじゃん!Loveの好きじゃん!神田さんかっこよすぎん?やばいキュンキュンする。やば…」

「違うって。ハグは海外のコミュニケーションだっておっしゃったもん」


いつの間にか佐和専用と化した我が家の来客時の寝具セット。その枕を抱きしめて、床に敷いた布団の上で「やばいやばい」と足をじたばたさせる佐和。
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