この結婚には愛しかない
私たち3人は今の会社には中途採用入社で、同じ部屋で働いている。佐和は経営企画室。私と同じタイミングで入社し、同じ歳で今年29歳になる。

長谷川くんと私は事業戦略室。この2部門は経営の中枢で経営層直轄の部署だ。

対社員にもコンフィデンシャルな機密を扱うことが多く、自社ビルの上層階の一室にまとめられている。同じフロアには社長室や専務室などもある。

壁に耳あり障子に目ありだ。宅飲みは情報漏洩のリスク回避のためである。


家主が早々に酔っ払ってしまったため、いつもより早めの解散となり、長谷川くんと最寄駅へ向かう。途中、ライトアップされた桜並木を通っているところで、長谷川くんが足を止めた。


「ちょっとあそこ座りません?」

私の返事を待たず、行きましょと長谷川くんが桜の木の下のベンチに向かうので、その後を追う。

ベンチに座り、ライトアップされた桜の木を見上げ、思わずキレイだねと呟いた。
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