この結婚には愛しかない
長谷川くんが転職してきて2年、席を並べて一緒に働いている。

長谷川くんは税理士の資格を持っていて、税務財務はもちろん、管理会計でも何でもこなす数字のスペシャリスト。

私には無いスキルだから、すごいなっていつも思っている。


「なんか言ってくださいよ。年下は対象外ですか?」

「ごめん」

「そのごめんは無言に対してのごめんですか?それとも俺の告白に対してのごめんですか?」

「長谷川くん、」

「くそ、ムカつくわ。とにかく可愛いんですよ小泉さん。なんですかその困ったような泣きそうな顔。すげえ抱きしめたい。ムリごめん」

「えっ、長谷川くんっ」

グイ、肩を抱き寄せられ、体がすっぽりと長谷川くんの両腕に収まる。ぎゅ、と強い力に、長谷川くんの気持ちが伝わってくる。

抵抗しようと両腕で長谷川くんの体を押すと、余計に抱きしめられた。


男性に抱きしめられ体が強ばってしまう。瞬間的に蘇る記憶。

声が震えてしまわないように、小さく呼吸を整える。

「長谷川くん好きって言ってくれてありがとう。長くなるけど話聞いてもらっていい?」


真剣な気持ちには、真剣に対応したい。

私が転職した経緯と、それから...
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