この結婚には愛しかない
「佐和何飲む?いつもの?」

「うん抹茶。アイスね。莉央は?」

「私も同じのお願いします」

「了解。俺たち店内で飲んだ後テイクアウトしてくるからゆっくり話して」

「ありがとよろしく」

車を降り、走って店内に向かう2人の後ろ姿に「ありがとう」とお礼を口にした。


だいぶ落ち着いた私は、佐和に聞いてもらった。さっきはグダグダで全然上手く説明できなかったけれど、今度はミシェルさんという謎の女性についても伝えることが出来た。


「よくがんばったね」

全てを伝え終わったあと、再度そう言ってくれた佐和が泣きそうな顔をしていた。


「莉央、全然泣く必要ない。神田さんは嬉しいよありがとうって言ってくれたんでしょ?」

「でも肝心の好きが言えなくて、ああしたいこうしたいって自分のことばかり。願望ばっかり押し付けちゃったから...それに恋人がいるのかも聞けてない」

「いないでしょ。いたら莉央に甘えて抱き合わないでしょ。私はあの人がそんな不誠実な人には思えない」

「それは私も...」


一緒に働くと、思った以上にその人の人となりが見えてくる。優しそうな人が影で悪口を言っていたり、真面目そうな人がサボりがちだったり。

神田さんに対しては、裏表のない誠実なところにも惹かれたのだ。

< 62 / 348 >

この作品をシェア

pagetop