この結婚には愛しかない
「再来週の金曜日って何日?」

佐和に言われ、カレンダーアプリを開く。


「(あ!)」

「莉央の誕生日だ。神田さん知ってるの?」

「知らない、...と思う」

「そっか、偶然か...ねえ莉央?私莉央にずっと内緒にしてたことがある」

佐和が改まった表情をしていて不安が込み上げる。次の言葉を聞きたくないような。


「内緒にしてって言われてたから黙ってたけど、もう3年前だから時効成立だよね」

「3年前?」

「うん。牡蠣ドタキャンのことなんだけど、神田さんと今日その話になったって」

「あ、うん。神田さんが『初めてのデート』って表現してくださったってさっき言ったやつだよね?」

「私と大森さん、ドタキャンしてほしいって神田さんに頼まれたんだ。もうすぐ出向が終わって莉央に会えなくなるから、最後に2人きりで会いたいからって。でも莉央にはこの事言わないで欲しいって」

「うそ...」


土砂降りだった心に、光が見えた。

もしかしたら。もしかしたらと期待してしまう。


自己肯定感はまだ低いままだけど、2週間後に背筋を伸ばして、今度はちゃんと全て伝えたい。


神田さんを思う気持ちだけは、誰にも負けない自信がある。
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