この結婚には愛しかない
「すみませんどさくさに紛れて抱きしめて」

「ほんとだよ。近い近い、まだ近いから」

すっと距離をとって座り直した長谷川くんが笑う。


「やっといつもの小泉さんに戻ってきました?」

「そうかな」

「そうですよ。今日1日暗すぎて心配しました」

「ごめんね」


僅かな沈黙。

その間、じ、と私の目を見る長谷川くん。


「私...ずっと想ってる人がいる」

ピクリと眉をひそめた長谷川くんが、どんな人ですか?と尋ねる。


「何から話せばいいかまとまらないから、結論ファーストじゃないけど聞いてくれる?」


そう前置きして、まずは転職するに至った前職での出来事から話すことにした。

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