この結婚には愛しかない
腕の中の花束は、白やピンクのユリがメインで、とてもいい香りがする。

特別な日に、特別な人からこんなにステキな花束をもらえて最高に幸せで、神田さんといると“最高”が一瞬で更新される。


デザートはバースデープレートにしてくださっていた。ずっと抱えていたかったけれど、一旦花束は椅子の上に置き、温かいコーヒーを飲みながら、デザートをいただいた。

食べ終わったタイミングで、神田さんがゆっくりとお話を始めた。


「俺の人生において、恋愛が脳や心を占める割合が圧倒的に少なかった。好奇心はあったからそれなりの経験はしたけど」

神田さんの口からこんな話を聞くのは初めてだった。

と同時に、私のプロポーズに対する返事が近づいていることを感じ、心が動揺を始める。


「1年間の子会社出向を終えて、ホールディングスに戻って。花形部署の部長、それも執行役員に抜擢されて毎日忙しく国内外を飛び回ってるのに、圧倒的に何かが足りないんだ」


長くなるけどごめんね。と言われ、頷くことしかできない。
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