この結婚には愛しかない
「すみません私、何も気付かず」
「ううん、俺が何も言わなかったから。俺が言葉を送らなかったこと、不自然だったよね。言葉にすると気持ちが止まらなくなりそうだったから。帰国する度、何度このまま飛行機を乗り継いで君を迎えに行こうと思ったことか。でもそれは出来ないと思ったよ。前職で辛い思いをして、1年かけて人間不信を克服して、仕事の楽しさを知ってもらってこれからも仕事を頑張って欲しいと思ってたから」
「前職のこと...ご存知だったんですね」
「そりゃあね、俺は元直属の所属長だったから。それに、俺が経営者になったらそんな銀行との取り引き切ってやるって思ってた。今も思ってる」
ふ、と私から笑みがこぼれる。神田さんにそう言っていただけるだけで十分だ。
「出向最終日の送別会の後、涙を流して別れを惜しんでくれる小泉さんに、何もかも捨てさせてこのまま東京に連れ去ろうかと本気で考えた。仕事をがんばって欲しいとか言いながら、矛盾だらけ」
泣くな。泣くな。もうとっくに涙で視界が揺れてるけど、もう絶対泣かないと決めていたのでギリギリのところで耐え続ける。
私も前回の続きを伝えたいのに、今はちょっと言葉にできそうにない。
「ううん、俺が何も言わなかったから。俺が言葉を送らなかったこと、不自然だったよね。言葉にすると気持ちが止まらなくなりそうだったから。帰国する度、何度このまま飛行機を乗り継いで君を迎えに行こうと思ったことか。でもそれは出来ないと思ったよ。前職で辛い思いをして、1年かけて人間不信を克服して、仕事の楽しさを知ってもらってこれからも仕事を頑張って欲しいと思ってたから」
「前職のこと...ご存知だったんですね」
「そりゃあね、俺は元直属の所属長だったから。それに、俺が経営者になったらそんな銀行との取り引き切ってやるって思ってた。今も思ってる」
ふ、と私から笑みがこぼれる。神田さんにそう言っていただけるだけで十分だ。
「出向最終日の送別会の後、涙を流して別れを惜しんでくれる小泉さんに、何もかも捨てさせてこのまま東京に連れ去ろうかと本気で考えた。仕事をがんばって欲しいとか言いながら、矛盾だらけ」
泣くな。泣くな。もうとっくに涙で視界が揺れてるけど、もう絶対泣かないと決めていたのでギリギリのところで耐え続ける。
私も前回の続きを伝えたいのに、今はちょっと言葉にできそうにない。