この結婚には愛しかない
「3年振りに会った小泉さんはますますかわいくなってるし、仕事面でもすごく成長してたから嬉しかったよ。メッセージから恋人はいないと確信してたけど、名前がよく出てくる長谷川くんの存在が気にかかってた。でも実際に小泉さんに会ってハグして、まだ俺に好意を持ってくれてると感じて安心した」

神田さんがお水を1口飲んで、スーツのジャケットの胸ポケットから1枚の用紙を出された。内側に2回折られたそれを手に持ったまま、話を続けられる。


「マイナススタートの会社を何とか軌道に乗せるのが最優先だし、様子を見ながらゆっくり口説いていくつもりだったのに、まさか交際なしでプロポーズしてもらえるとは...驚いた。プロポーズは男性がするものだと思ってたけど、されるのも嬉しいね。でも俺の口からも言わせて欲しい。大好きな小泉さんに、一生に一度のプロポーズ」


そう言って神田さんが開いた用紙は婚姻届だった。

既に神田さんのお名前が記入されていて捺印済み。さらには、保証人欄2箇所のうちの1箇所には、社長が記名捺印されていた。

「社長に保証人を頼んだ時、すごく驚いてて笑ったよ。相手は誰だって聞かれたから、事業戦略の小泉さんだって言ったら、この前はまずいこと言ったなあって。大笑いしたよ。もうひとりの保証人は小泉さんのご家族にお願いしたい」

うんうんと頷く私に、「かわいいね」と笑ってくださる。

「小泉さん、俺と結婚して欲しい。一生愛すと誓うよ。俺を信じて、ずっとそばで支えて欲しい」
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