この結婚には愛しかない
神田さんの大きな手の中には、指輪の入った箱があって。

「結婚指輪は2人で選ぼう」

「はい...神田さん...」


左手の薬指に指輪をはめてくださった。シルバーのリングに、ぐるっと一周キラキラ輝くダイヤモンドが埋め込まれているそれは、うっとりするほど美しかった。

リングが光る左手の指先を、神田さんの指がなぞる。そのしぐさが色っぽくて、触れられた箇所が熱を帯び、神田さんから目が離せない。


「小泉さんの華奢な指によく似合ってる。思った通りだった」

「ありがとうございます。お忙しいのにこんな素敵な指輪を用意してくださって、ディナーまで...」

「小泉さんに喜んでもらいたいからね。ねえこれだけは聞かせて欲しい。この前の小泉さんのプロポーズ。入籍したくない訳じゃないし、契約婚なんて嫌だよね?」

「はい...嫌です。神田さんのことが大好きです。ずっと離れていてもお慕いしてました」

「この結婚に、愛はある?」

「この結婚には愛しかないです」


やっと、やっとこの気持ちを口にすることができた。

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