この結婚には愛しかない
L字型の長い方のソファーの真ん中に座り、神田さんに肩を抱かれ引き寄せられる。逃げようとするも、「身体預けて」と先に言われてしまい、素直にそのまま甘えさせていただくことにした。


「入籍いつにしよっか。希望日ある?」

うーん、と考え込んでしまう。入籍。先に結婚を申し込んだのは私のくせに、全く具体的なことは考えていなかったのが実際のところ。

「まさか結婚していただけるなんて思ってなくて、何も考えていませんでした」

素直にそうお伝えすると、「まずはそうだな」と私の肩に回された腕に力が加わり、もたれかかってしまう。

慌ててバランスを取ろうとした左手を、伸びてきた神田さんの左手で掴まれ、右肩、左手ともにがっちりとホールドされる。


近いです。本当にもうこれ以上はパニックになってしまいます。


「そのビジネスメールみたいな謙譲語と敬語の合わせ技やめよっか」

「私のしゃべり方ですか?」

「そう。丁寧すぎる敬語禁止。今は上司と部下じゃないでしょ。俺たち夫婦になるし」

「善処いたします」

「そういうのね。わかったでいいんだから」

「おいおい、ということで」
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