この結婚には愛しかない

「小泉さんの結婚指輪は、これに重ね付けできるのがいいな」

左手の拘束が緩むと、今度は神田さんの大きな手、長い指が私の指を絡めとる。リングをクルクルと回され、ちょっと大きかったかな?と微笑まれる。


「俺も早くマリッジリングはめたいな」

「私もです!いつ行きます?あ、いえその、神田さんのご都合のよろしい時で結構ですので...」

「小泉さんにはもっと思ってること遠慮せずに伝えて欲しいし、わがままも言って欲しい。今すぐにとは言わないから、ゆっくりがんばって」

それから、小泉さんの実家に挨拶行って、婚姻届の保証人になってもらって、俺の両親はひとまずオンラインでいいから。など、神田さんの口から、結婚に対してのやるべきことが具体化されていき、現実味が帯びてくる。


「本当に結婚していただけるんですね。夢みたいです」

「俺も今浮かれてるよ」

「そうなんですか?」

「あ、思い出した。誕生日プレゼント渡すの忘れてる」

ほらね浮かれてる。と立ち上がった神田さん。やっと拘束が解け、体の緊張がほんの少し楽になった。でも。


「さっき素敵な花束いただきました」

広い部屋の隅にしゃがみこんで、置かれていたシルバーのスーツケースを開ける神田さんに声をかける。
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