この結婚には愛しかない
「今回韓国に何しに行ってたか知ってるんだっけ?」

「いえ、存じ上げません」

「ほらまた“存じ上げません”。さっきは“していただける”って言った。存じ上げないを言い直して」

「...知らないです」

「もう少しがんばって敬語取ろっか」

「...わかんない。もうやだ神田さん意地悪です」

「ははっやばいね、ほんっとかわいい。“知らない”でしょそこは」


今回の渡韓はね、と教えてくださった...教えてくれた渡韓の目的は、第2のホールディングス探しだそうだ。

現在の我が社の半導体事業の売上の7割がホールディングスからの受注だ。今後、独立が影響し受注が減ることが予想されるため、新たな後ろ盾を探されているらしい。

それは神田専務がビジョン10策定においておっしゃられていた『攻めと守り』との守りで、これとは別に攻めについてもお考えがあるらしい。


それにしても、染み付いた敬語はなかなか根が深い。
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