この結婚には愛しかない
車に疎い私でも知っている、右ハンドルの外車。この形はSUVと言うんだと教えてもらった。

色を白か黒かで迷っていて、明日現物を見て決められるらしい。


ハンドルを握る横顔が陽の光に照らされ、すごくかっこよくて、ずっと見ていられる。


「そんな見つめないでよ」

「伊織さんは全方位かっこいいんです。かっこよくて目が離せません」

「ははっ全方位か。じゃあ俺も可愛いすぎる莉央から目を離さないでおくね」

「危ないです!前向いてください!」



マンション前に車を停めた伊織さんが、ハザードボタンを押して運転席から降りた。

私も降りようとドアを開けようとすると、外から回った伊織さんが開けてくれた。

「気をつけて」とドアを手で支えてくれて、左手を繋いで誘導してくれてリアルに“伊織王子”。海外での暮らしに慣れているからなのだろうか。


「送っていただいてありがとうございました」

「ごめんね、どうしても終わらせたい仕事があって。また夜ね。会社出る前に連絡入れるね」

「はい。伊織さんお仕事がんばってください。あ、神田専務」

「今は伊織だよ」

そして突然のキス。

驚いてるうちに唇は離れ「晩ご飯楽しみにしてる」と、昨夜もらった誕生日プレゼントを手渡してくれた。

別れ際までドキドキさせられて、走り去る車が見えなくなるまで見送った。
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