あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
それからしばらくして、聖女が誕生したとの報告が、イングラム国内を走り抜けた。その報告は国内だけにとどまらず、四方に接する隣国にも伝わる。
あの日以来、コリーンはふさぎがちではあったが、彼女も王城務めが決まった。
というのも、それすらあの父親がどこからか持ってきた話である。
コリーンが侍女として王城で務めを果たし、その結果、伴侶と出会えることをエイムズ子爵は望んでいるのだ。コリーン本人が、それを望んでいなくても。
だが、コリーンが王城務めをすることで、彼女自身にも変化が訪れた。どことなく明るくなったようにも見えるし、今の生活に満足しているようにも見えた。
それは、エイムズ子爵家から少し距離をおけるような暮らしになったからかもしれない。
それでもそんな生活は長くは続かなかった。
『お兄さま!』
何かあるたびに、コリーンはすぐにヘンリーの部屋へと飛び込んでくる。
『コリーン。いつも言っているだろう? いかなるときでも、淑女は落ち着いて行動しなさいと』
『落ち着いてなんかいられない……』
部屋の入り口で立ち尽くした彼女は、きつく唇をかみしめている。手の甲に血管が浮き出るくらい、力強く拳を握っている。
『お兄さま。知っていましたか?』
『何をだい?』
『ウリヤナが……ウリヤナがクロヴィス殿下と婚約するって……』
それは、最近になって密かに漂い始めた噂だ。
王太子クロヴィス殿下は、聖女様と婚約をするだろう――
あの日以来、コリーンはふさぎがちではあったが、彼女も王城務めが決まった。
というのも、それすらあの父親がどこからか持ってきた話である。
コリーンが侍女として王城で務めを果たし、その結果、伴侶と出会えることをエイムズ子爵は望んでいるのだ。コリーン本人が、それを望んでいなくても。
だが、コリーンが王城務めをすることで、彼女自身にも変化が訪れた。どことなく明るくなったようにも見えるし、今の生活に満足しているようにも見えた。
それは、エイムズ子爵家から少し距離をおけるような暮らしになったからかもしれない。
それでもそんな生活は長くは続かなかった。
『お兄さま!』
何かあるたびに、コリーンはすぐにヘンリーの部屋へと飛び込んでくる。
『コリーン。いつも言っているだろう? いかなるときでも、淑女は落ち着いて行動しなさいと』
『落ち着いてなんかいられない……』
部屋の入り口で立ち尽くした彼女は、きつく唇をかみしめている。手の甲に血管が浮き出るくらい、力強く拳を握っている。
『お兄さま。知っていましたか?』
『何をだい?』
『ウリヤナが……ウリヤナがクロヴィス殿下と婚約するって……』
それは、最近になって密かに漂い始めた噂だ。
王太子クロヴィス殿下は、聖女様と婚約をするだろう――